イワシで温活

温活におすすめの食材

 イワシが縄文時代から食べられていたのは、貝塚からイワシの化石が発掘されていることからわかります。有史では奈良時代から一般に食べられていて、江戸時代の「日々徳用倹約料理角力取組」(ひびとくようけんやくりょうりすもうとりくみ)という当時の日常食のランキングを記した書物があり、そこでイワシ料理が多く取り上げられているように、当時から手ごろで人気の食材として紹介されていました。現代でも安価な人々に愛されている食材です。

 イワシは潮流に乗る回遊魚で、全国各地で漁獲されます。安く、飽きない味で人気の魚です。旬は各地まちまちで、一年中質の良いものが手に入り栄養価の高い食材です。また漢方の薬膳に於いては、体を温める食材(温性)として紹介されています。

 薬膳は、中医学の医食同源に基づく食事の方法です。食材のもつ性質が、体温に与える影響を五つに分類し「熱・温・平・涼・寒」の五性として表記されます。体を温める食材から体を冷やす食材、またどちらでもないものと細かく分けられ、そこでイワシは温性の食材として紹介されています。

中医学に於いて『瘀血』(おけつ)と呼ばれる症状があります。それは血の流れが悪く、滞り、よどんだ状態を指しています。血液の粘度が高くなることで、血流を悪化させ、不定愁訴ならびに高血圧や貧血、脳血管障害、痔疾などを引き起こすとされています。

漢方でイワシは気を補い、血のめぐりをよくする食材とされています。イワシは瘀血(おけつ)体質の改善効果があり、温活にとってもこのうえない食材と考えられています。

目次

イワシの実力

マイワシの栄養成分(100gあたり)

  • カロリー   169kcal
  • 水分     68.9g
  • たんぱく質  19.2g
  • 脂質     9.2g
  • 鉄分     2.1mg
  • カルシウム  70mg
  • マグネシウム 30mg
  • 亜鉛     1.8mg
  • ビタミンB12  15.7μg
  • ビタミンD   10.0μg

 市場に出回るほとんどはマイワシで、めざしとしてウルメイワシ、いりこ出汁でおなじみの煮干しやアンチョビのカタクチイワシなどが有名です。良質のたんぱく質、カルシウムに加え、ビタミンB群、ビタミンD、老化防止成分のレチノールと、他にも有効成分がたくさん含まれる栄養の宝庫です。

温活におすすめな理由

 江戸時代に遡ると、イワシについて『江戸朝食艦』という食材図鑑のような書物には、「気血を潤して筋肉を強め、臓腑を補い、経路を通ず」と記されています。筋肉と血流の相互関係は温活にとって最も注目すべきところです。栄養学的にも豊富なたんぱく質を含み、不飽和脂肪酸で構成されるイワシのEPAやDHAには、血中コレステロールを低下させ、血流を良くし血栓を出来づらくさせる作用があります。

またマイワシには、血液の循環を助けるビタミンB₃のナイアシンが多く含まれます。そして、それらの成分には高脂血症や脳梗塞、動脈硬化に心筋梗塞などを防ぐ働きがあります。更に筋肉の回復効果があるバリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニンなどのアミノ酸が豊富に含まれ、イワシに含有されるアドレナリンの原料となるチロシンも、筋肉強化に一役かっています。このように昔からイワシは栄養価の高い健康食として重宝されていたことがわかります。

イワシ料理の豊富なバリエーション

 イワシは安くて、和食洋食問わず飽きのこない、バリエーション豊かな食材です。日々温活に取り組む方にとって、とても心強い味方ではないでしょうか。青魚が苦手という方は、オイルサーデインやアンチョビをほぐして料理に加えたり、チーズなどと合わせると食べやすくなると思います。因みにオイルサーディンはマイワシやウルメイワシを使用し、アンチョビはカタクチイワシを使っています。しかし、それでもイワシが嫌いな方は、青魚を原料にしたEPAやDHA含有のサプリが様々販売されています。

イワシの今後の行方

 日本全体のイワシの漁獲量の70%がマイワシです。プランクトンを食料として、最大30cmほどに成長します。約8年の寿命で、1度の産卵で3万から5万の卵を産みます。2000年代前半にイワシの漁獲高が減少し価格が高騰、一時大衆魚としての地位が危ぶまれたこともありました。

マイワシの数は、数十年の周期で変動を繰り返すとされ、1965年には1万tを割ったと記録されています。1970年代には上昇傾向で、1980年後半にピークを迎え450万tを記録、これは当時日本の総漁業生産量の30%以上を占めました。そこからまた下がり、2005年で3万tにまで落ち込みます。

そこから現在では、再び回復傾向の兆しで、50万t以上にまで回復しています。増減の背景には諸説ありますが、詳しくはわかっておりません。補足でカタクチイワシになりますと、年間15~50万t、ウルメイワシは、年間2万~6万tの水揚げ量となっています。

イワシを食べよう

 近年、冷凍技術の進歩により、質の良いイワシが一年中、市場に出回るようになっています。液体窒素を使った急速冷凍法は、水揚げされたイワシを10時間以内に凍結させることで、解凍後刺身で食べられるほど、新鮮な状態で保存が可能になっています。

それとは別に、魚の養殖も盛んにおこなわれ、鮪や鯛、鰤、河豚、平目など主に高級魚を中心に多くの魚が養殖されています。イワシは研究こそされていますが、まだ流通には至っておりません。しかし、いずれ可能になることでしょう、食糧難が叫ばれる昨今、養殖技術の発展は頼もしいことです。

世界的な物価の上昇やエネルギーの高騰もあって、財布の紐は固くなる一方です。そんな時代だからこそ、まだまだイワシが大衆食材として、漁獲量が維持されていることはありがたいことです。

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